先輩が文学賞を

テレビのあと礼子さんから電話があり、やっぱり先輩が文学賞を獲ったという話しでした。
「受賞パーティーに誘われてるんだけれど有紀ちゃんもでてくれないかしら」と言われて、「私はそんなに親しくしてたわけでもないから」と一応は断って見ましたが「親しい友達とかいなかったでしょう、だから有紀ちゃんでいいのよ、ともかく人数揃えないとみっともないから」と言われてしまいました。
受賞パーティーには、審査員や文学賞の事務担当のスタッフなどにたくさん招待状を出したのですが、来てくれる人が少なくて、困っているということでした。
私は人数が足りないのでかり出されるだけのようでしたが、一流のホテルで料理が食べられるので行くことにしました。
乾杯のあと料理を食べていると先輩が私を手招きして呼んでくれました。
中年のやや小太りの男性が先輩のそばにいて、私に名刺を渡してくれました。
「どんな本を書いてるんですか」と聞かれて、「まだ書いてないんですが」と返事をすると、「じゃあ出来たら是非見せて下さいな、いや楽しみだ」と言われました。
「先生どうです有紀ちゃん小説家になれますか、先生だったら顔をみただけで才能がおわかりでしょう」と先輩がすこし意地悪っぽくいいました。
すると先生は「いや、僕が指導すれば新人賞くらいすぐ取れますよ」と思いがけない返事でした。
「じゃあ有紀ちゃん、弟子にしてもらいなさいな、よかったわね」と言われて、私はいつの間にか弟子にされてしまってびっくりしました。
しかし、新人賞くらいはすぐ取れるという言葉を聞いて、私も小説家になれるのかと思うと気分は有頂天でした。
「今度の日曜日にでも遊びに来なさい」と言われて断る訳にもいきませんでした。
ともかく書いた物を見てもらった方がいいと思って、原稿用紙で数枚の短編を書いて、当日先生の家まで行きました。
途中でケーキ屋があったので、お土産を買っていったほうがいいと思って、ショートケーキを4つ程買いました。
ドアのベルを鳴らすと、お嬢さんらしい人がでてきました。
しかし様子ではお手伝いの人のようでお嬢さんではないようでした。

書斎に通されると、先生はまだ寝てるからといってずいぶんと待たされました。
何時頃いつも起きられるのですかと聞いてみると、昨日は友達とお酒を飲んだので今日は何時に起きられるのか分かりませんと言われました。
こんなことならもっと遅く来れば良かったと思いました。
ようやく午後おそくに先生が起きてくると私はさっそく書いてきた短編を読んでもらおうと鞄から出して先生に渡そうとしました。
しかし先生は、見なくても分かるからと、手に取ろうとさえしませんでした。
「小説家になりたいの、どうなの、小説家になりたいという覚悟はあるの」と先生がいきなり聞いてきました。
私はそんな言い方をされてもどう答えていいのか分からずに、「はい、覚悟はしてます」といいかげんな気持ちで適当にいいました。
「じゃあ、明日から毎日朝6時に来なさい」と言うと部屋をでてどこかに行ってしまいました。
私が部屋をでて帰ろうとするとさっきの女性が「なんて言われたんですか」と聞いてきました。
「明日朝6時に来るように言われたんですが、先生は6時にはまだ寝てるんでしょう」と聞いてみました。
すると「先生は朝の5時くらいまで原稿書いてて、朝刊を読んでくらいに寝られるんですよ」と言われてびっくりしました。
「ほかに何か言われましたか」と聞かれて「いいえ何も」と答えると、「たぶん先生が書いた原稿をワープロで入力してもらうんだと思います、ワープロ出来ますよね」と言われました。
私はパソコンのワープロなら一応使えるので、「ええまあ、得意ですけど」と返事をしました。

 

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